東京都現代美術館の“ジャン・プルーヴェ展”で希少なイスを鑑賞

ジャン・プルーヴェ展 アート
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東京都現代美術館で開催中のジャン・プルーヴェ展に行ってきました。

元ZOZOの前澤友作さんが家具をコレクションしていることで有名なインテリアデザイナー“Jean Prouvé”の生涯を追った大規模展です。

当時、制作された希少な作品が集まる展示会は、プルーヴェ好きな人やアートコレクター、学生もたくさん訪れる見応えのある内容でした。

このイベントが気になっている方や、遠方で見に行けない方に見てもらいたい記事になっています。

東京都現代美術館(MOT)とは

東京都現代美術館_MOT

東京都現代美術館は1995年3月に開館した国内にある美術館の中でも比較的、新しい美術館です。

日本の戦後における美術品を中心に研究、収集、保存、展示することを目的として設立され、国内外の現代における創作活動を取り上げてきました。

自ら収集してきた5,500点に及ぶ作品を展示するコレクション展示と、天井高の違う3フロア約4,000㎡を使った季節ごとの企画展を開催しています。

独自の視点で展示される作品は幅広い層がいつ訪れても楽しめるよう工夫されています。

Jean Prouvé(ジャン・プルーヴェ)とは

ジャン・プルーヴェは1901年、フランス・パリで生まれました。

画家・彫刻家の父と音楽家の母を両親に持ち、アール・ヌーヴォー全盛の時代に育ちます。

また父・ヴィクトールはエミール・ガレとも親交が深く、幼い頃からレベルの高い芸術に囲まれて過ごしたことがうかがえます。

金属工芸家としてキャリアをスタートさせ、家具や建築が近代化されるようなると、次々と新しいアイディアを実現化し、誰も見たことのない先進的な創作活動を行います。

プルーヴェの代表作と言えば、三角形の脚が特徴のイス(スタンダードチェア)やテーブル(ゲリドンテーブルイーエムテーブル)ですが、建築家としてもプレファブ住宅のような革命的な設計も有名です。

そして部屋に籠ることを良しとせず、現場に出ることで想像を掻き立てていたプルーヴェはデザイナーという枠を飛び越え、地元ナンシー市の市長も務めました。

晩年には若かりしリチャード・ロジャースとレンゾ・ピアノの才能を見出し、パリ・ポンピドゥーセンターのデザインコンペにおいて審査員長として2人の案を選出しています。

また同時代のフランスで共に活躍したル・コルビュジエピエール・ジャンヌレシャルロット・ペリアンも著名なデザイナーとして今なお支持され注目を集めています。

ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで

現代における建築、家具のみならずファッション、アート業界にも影響を与えるジャン・プルーヴェですが、その人物像を詳細に描いた書物は少ないことから意外にも、その人柄は伝わっていません。

そんなプルーヴェを深く知ることの出来る展示会がこの『ジャン・プルーヴェ展』です。

1階と地下フロアの2層を使った展示会上は大きく9つのテーマに分かれてます。

イントロダクション(Introduction)

ジャン・プルーヴェ展_入り口

この先に続く濃厚な展示品に先駆けて、ジャン・プルーヴェの歴史を紐解きましょう。

ここでは、そんなプルーヴェの生い立ち、希少なコレクターアイテムが鑑賞できます。

どれも内容の濃いものになっていますが、もし混雑していたら後回しにして、空いているときに戻ってきましょう。

この展示室だけは、写真撮影禁止なのでご注意ください。

工芸から工業へ(The Birth of an Industry)

ジャン・プルーヴェ展_オフィスチェア_折りたたみテーブル
ジャン・プルーヴェ展_メトロポールチェア

金属工芸家としてキャリアをスタートさせるプルーヴェですが、1920年代後半になると薄鋼板を使うようになり、従来の特注品に加え量産品を制作するようになります。

また職人でありながら、工場経営者でもあったプルーヴェは広い視野を持ち、時代の移り変わりととも近代的な発想を仕事にも取り入れていきました。

ジャン・プルーヴェ展_ヴィシャード医師のためのテーブル

ヴィシャード医師のためのテーブル』は点灯時間が14:00~16:00の2時間だけです。

ジャン・プルーヴェ展_自転車

キャリア初期にデザインされた珍しい自転車も置いてありました。

ジャン・プルーヴェ展_3本脚の丸テーブル

スケッチも壁にかかっていると、それだけで一つの作品のようです。

椅子(Seats)

ジャン・プルーヴェ展_椅子(Seats)

プルーヴェの家具と聞いて、最初に連想するのがイスです。

1934年につくられたイスは、『スタンダードチェア』としてマイナーチェンジを繰り返しながら今なお親しまれています。

幅広くデザインされた三角形の後ろ脚が特徴のイスの意匠は、テーブル(イーエムテーブル・ゲリドンテーブル)のデザインにも使われています。

プルーヴェの代名詞でもあるスタンダードチェアですが、その変遷にも時代背景が色濃く反映されています。

ジャン・プルーヴェ展_木製チェア

第2次世界大戦時には、物資の不足により木製タイプを制作しました。その木製タイプはフランス国内で人気を博し、ロングヒット商品になります。

ジャン・プルーヴェ_スタンダード・チェア_パーツ
小さいビスまで、きれいに並べてあります。

このテーマでは、そのスタンダードチェアを分解したパーツが並べられ、構造的にも優れた家具だということが分かりやすく展示されています。

ジャン・プルーヴェ展_アントニーチェア

プルーヴェの隠れた名作『アントニーチェア』です。

熱成形されたブナ合板の座面から『フォトゥイユ・ムエット(カモメの椅子)』とも呼ばれていました。

ジャン・プルーヴェ展_オフィスチェア

1944年に完成したオフィスチェア、座面・肘掛け・背もたれの3箇所が折曲げ銅管製フレームで支えられています。

現行でもVitra(ヴィトラ)から『FAUTEUIL DIRECTION PIVOTANT(フォトゥイユ ディレクション ピボタン)』というモデルが販売されています。

以前、コンランショップに置いてあったので、座ったことがありますが、一度座ると立ち上がりたくないくらいクッションが身体にフィットします。

出版物(Publication)

ジャン・プルーヴェ展_印刷物

19世紀末から20世紀初頭は建築雑誌も発展しました。

ジャン・プルーヴェ展_publication

ここには、当時の貴重な書物や雑誌が置かれ、建築とともに世界に広がったグラフィックとの関係性も紹介されています。

ナンシーの自邸(Jean Prouvé’s House in Nancy)

ジャン・プルーヴェ_ファサード・パネル

1階最後の展示は、故郷ナンシーに建てたプルーヴェ自身の自宅です。

当初は6,000㎡という広大な土地に新しく考案した軽量な建築部材を使った平家住宅を建てる予定でしたが、基礎工事が完成した頃に、プルーヴェは勤めていた工場を去ることになります。

その後、計画を変更せざるをえず、捨てられるはずだった部材を使うことを決断しました。

ジャン・プルーヴェ_ナンシー自邸_建築工程

このテーマでは、その自宅を友人たちと3ヶ月かけて作りあげたときの切り取った写真と、ファサード・パネルの実物が展示してあります。

ジャン・プルーヴェの工場(Jean Prouvé’s Factory)

ジャン・プルーヴェ展_Jean Prouvé’s Factory

プルーヴェ作品が製作される工場は『アトリエ・ジャン・プルーヴェ』と呼ばれます。

第2次世界大戦後の1947年、プルーヴェは慣れ親しんだ故郷ナンシー市から近代化を目指し、工場を郊外のマクセヴィルへ移しました。

ジャン・プルーヴェ展_Jean Prouvé’s Factory

工場には新しい大型の機械が導入され、より強固な生産体制が整う一方で、そこで働く職人を始めとする人たちには利益はしっかりと分配される権利が与えられていました。

アフリカに向けて(Variant for Africa)

ジャン・プルーヴェ展_アフリカに向けて

1951年、エールフランスが新たに就航したのがパリとブラザヴィル(現在のコンゴの首都)を結ぶ路線でした。

そのブラザヴィルの社員宿舎の内装デザインを依頼されたのがプルーヴェと盟友シャルロット・ペリアンです。

ジャン・プルーヴェ展_Variant for Africa
解体して、輸送が可能な設計になっています。

内装をペリアン、家具をプルーヴェが担当した住戸は過酷な熱帯気候でも暑さを凌げるような日除けルーバーが導入されました。

組立・解体可能な建築と建築部材(Demountable Architectures & Architectural Elements)

ジャン・プルーヴェ展_F8×8BCC組立式住宅

家具から次第に、製作物が大きくなり、住宅を手掛けることになるプルーヴェは特徴的な『ポルティーク(門型)』架構と、ファサード・パネルを組み合わせた住宅を考え出します。

ジャン・プルーヴェ展_F8×8 BCC組立式住宅

8×8m、8×12m、6×9mと規格化した住宅は戦時中、簡単に、時間をかけず住む場所を確保できる機能が備わっていました。

地下1階フロアのメイン展示となる『F8×8 BCC組立式住宅』です。

プルーヴェとピエール・ジャンヌレの2人により協働プロジェクトとして高い完成度を誇ります。

ジャン・プルーヴェ展_F8×8 BCC組立式住宅
ジャン・プルーヴェ展_F8×8 BCC組立式住宅

室内には入れませんが、壁面の窓がところどころ開放されていて、インテリアや内装を直接見学することが出来ます。

館外から入ってくる太陽の光が、気持ちよく作品を照らしてくれるので、肉眼でもディティールをよく見ることができます。

映像「ジャン・プルーヴェ:建築家とその時代」(Jean Prouvé:The architect and his time)

この展示室にはプルーヴェのイスが設置され、本人が映し出されるスクリーンをゆっくり座って観覧することができます。

中でも、本人がユニットを解説するシーンは絶対に観てほしいです。

流暢でわかりやすく、その場で即興のスケッチを描きながら、素人にもわかりやくす説明できるのは職人とビジネスマンを両輪で生きてきた彼ならではのスキルです。

所要時間・混雑状況

かなりボリュームの濃い展示内容ですが、全ての展示物を見て、所要時間は2時間半でした。

日曜日の14時から入場しましたが、週末にしては混雑もなく、ゆっくり快適に過ごすことができました。

グッズ

会場ではグッズの販売はありませんでしたが、ギフトショップで図録『ジャン・プルーヴェ 椅子から建築まで』の予約販売を行なっていました。

(図録は事前予約すると税込3,000円、一般販売は3,080円です。)

図録は展示会のスタートに間に合わなかったようで、当初8月発売予定でしたが、更に発刊が遅れて9月発売予定になっていました。

美術館内のギフトショップ『NADiff(ナディッフ)』ではプルーヴェにまつわるVitra製のミニチュアチェアや書籍も置いてありました。

また併設されている空間では展示会場で流れていた映像作品『ジャン・プルーヴェ:建築家とその時代』が投影されているので、もう一度見たい方や、満員で見られなかった方には穴場スポットとしてオススメします。

パフェ

館内のレストラン『100本のスプーン』とカフェ&ラウンジ『二階のサンドイッチ』ではジャン・プルーヴェ展を記念した特別メニューが登場しています。

それぞれ『パフェ・ポルティーク(Parfait Portique)』(フルサイズ税込1200円/ハーフサイズ900円

)と『パフェ・ベッキーユ』(税込920円)はどちらも見た目華やかでインスタ映え間違いなしのメニューです。

開催期間

2022年7月16日(土)〜 2022年10月16日(日)

休館日は月曜日ですが、7月18日、9月19日、10月10日は開館しています。

その代わり7月19日(火)、9月20日(火)、10月11日(火)の3日間が休館日になります。

開館時間

10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)

観覧料

一般2,000円
大学生・専門学校生・65 歳以上1,300円
中高生800円
小学生以下無料

混雑緩和を目的とした日付指定の予約優先チケットも販売していますが、価格は当日券と同じです。

学生無料デー

Bloombergの支援によって8月30日(火)から9月2日(金)の4日間は学生を対象に入場料が無料になります。

中学生・高校生・専門学校生・大学生が対象者となります。

但し入場時、学生証の提示が必要になるのでご注意ください。

アクセス

東京メトロ半蔵門線「清澄白河駅」B2番出口より徒歩9分
都営地下鉄大江戸線「清澄白河駅」A3番出口より徒歩13分
東京メトロ東西線「木場駅」3番出口より徒歩15分、または都営バスで「東京都現代美術館前」下車
都営地下鉄新宿線「菊川駅」A4番出口より徒歩15分、または都営バスで「東京都現代美術館前」下車

まとめ

東京都現代美術館で開催されているジャン・プルーヴェの大規模展へ行ってきました。

すでにマニアックな知識も持っている方から、プルーヴェのことが気になっていたようなインテリアファンにもわかりやすい展示になっています。

ここまで充実した展示物やヴィンテージアイテムが一堂に揃うことはなかなかありませんので、気になる方はぜひ足を運んでみてください◎

最後までお読みいただきありがとうございました/

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